脅かされた日常

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「今更怖がる? 逃げようとするくらいの元気があったのに」 「ご、ごめんなさい……もう、しませんから……」  咲結が先程よりも怯えているのは、馬宮の手にナイフが握られているから。  これ以上刺激してはマズイと思った咲結は自身の行動を反省して謝罪の言葉を口にした。 「ああ、これが怖いのか。可哀想だと思ったから、拘束しないでやったし、刃物も持たなかった。けど、逃げようとするならこっちも考えないとさぁ」 「ごめんなさい……っ」  脅える咲結のすぐ側までやって来て頬にナイフを当てた馬宮は薄ら笑みを浮かべながら言葉を続けた。 「言葉だけじゃ、信用出来ないなぁ。態度で示して貰わないと」 「……ど、どうすれば……」 「俺さぁ、咲結ちゃんともう少し親密な関係になりいなぁって思ってるんだ〜。キミ、結構可愛いし、女子高生ってもの良いしね。だから、俺を満足させてくれたら、危害は加えない。約束するよ。どお?」 「……ま、満足……?」 「あれ? 分からない? 咲結ちゃんって初心なんだね? もしかして……処女だったりするの?」 「……っ」 「その顔、図星? ふーん、そっかぁ、そうなんだぁ? へぇ〜、処女かぁ……それじゃあ、俺が咲結ちゃんを犯したら、海堂はすげぇ怒り狂うだろうね。はは、そりゃ面白いなぁ」 「や……、やめて……っ」  馬宮は一人笑いながらナイフを懐にしまうと、震える咲結の肩に触れる。 「大丈夫、怖がらなくていい。まあ、優しく出来るかは分からないけど、気持ち良くはしてあげるからさぁ」 「いや、……やめて、触らないで……っ!」  馬宮の手が肩から着ていたブラウスのボタンに添えられ、一つ、また一つとボタンが外されていく中、どうにか逃れたい咲結は出せる力を振り絞って手を振り上げると、その手が馬宮の腕に当たってしまう。 「……大人しくしてろって言ってんじゃん。騒がれるのって不快なんだよ、俺」 「……っ」  咲結がなかなか大人しくならず、いつまでも反抗的な態度を取り続けている事に苛立ちを覚えた馬宮の顔からは笑顔が消え、冷たく鋭い視線が向けられ、両腕を掴まれたまま壁に身体を押し付けられる。  それでも、このままでは危険だと感じた咲結が掴まれた腕を振り解こうとすると、 「大人しくしろって言ってんだろ!」 「きゃっ!?」  馬宮は右手を離すと、平手打ちで咲結の左頬を勢い良く殴った。 「おい、この女、縛ってその辺に転がしとけ」  そして、興醒めしたのか近くに居た男に咲結を縛るよう命じると、馬宮はそのまま入り口の方へ歩いて行った。
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