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第17話 思いがけない帰国
「オリアーヌ」
呼ばれた声のほうを見上げた私は、その姿に驚きを隠せなかった。
「ガ、ガブリエル、様……」
公務に赴き、帰りがいつになるかわからないと言っていたガブリエルがそこに立っていた。
「公務ではなかったんですか?」
「速攻で終わらせて帰ってきた。帰りの馬車でお前を見かけて、途中で降ろしてもらったんだ。ほら、土産だ」
ガブリエルはそう言うと、私に小さな紙袋を渡した。
「ええ! お土産ですか? あの、これは?」
「リボンだ。公務で行った隣国で人気なんだそうだ。お前にやる」
「リボン!!! ガブリエル様がこれをお買いになったんですか? ぷっ……」
ガブリエルがリボンをどんな顔で買っていたんだろうと想像して、私は吹き出した。
「お前……。俺の好意を笑うとは……。そんな奴はこうしてやる!」
ガブリエルはそう言うと、私の手を掴んで引っ張り自分のほうに抱き寄せるとそのままシロツメクサの上に私ごと寝転んだ。
「きゃあ!!!」
私は、持っていたシロツメクサを落としてしまい、横に寝転んでいるガブリエルに文句を言おうとした。
(か、顔が近い……)
ガブリエルの綺麗な顔がすぐ隣にあり、私はドキドキして言葉を飲み込んだ。
そんな私を見て、ガブリエルがニヤリとして言った。
「なんだ? 俺の顔に見惚れているのか? それとも、何か言いたいことがあるのか?」
見惚れていたことを知られたくなくて、私は顔を背けて言った。
「せっかく摘んだシロツメクサが落ちてしまったではないですか!」
私がそう言うと、ガブリエルは笑いながら起き上がった。
「はは。こんなにたくさんあるんだからまた摘めばいいだろ?」
「さっき念入りに選んだんです! もう一度選び直さないと」
私は、ドキドキしている気持ちを隠すように起き上がると、シロツメクサを摘み始めた。
「そういえば、お前この間の舞踏会の時から様子がおかしかったな。どうかしたのか?」
ガブリエルは、私と一緒にシロツメクサを選びながらそう尋ねた。
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