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第1話 転生希望
〜死後の世界〜
ここは、死者が次の人生を振り分けられる場所……。
『転生を希望される方はこちら』
そう書かれた紙の前には、ずらっと長蛇の列が出来ている。
先程ここに来たばかりの私は、右も左も分からず彷徨っていた。
そんな私に、ここの係員らしき男性が声を掛けてくる。
「初めての方ですか?」
「は、はい。今、ここに来たばかりで……」
私は、苦笑いをしながら内心ドキドキして答えた。
死後ってこんなに早く次の人生が決まってしまうものなの? ……。
想像していた死後とここのギャップに頭が痛くなる。
死後の世界っていうのは、もっとゆったりとした時間が流れていて、美味しいものがたくさんあって、素敵な音楽が流れていて……そういうものじゃないの!?
「転生をご希望ですか?」
再び、男性が私に質問をする。
私は、ここに来る前の記憶を大事に思い出しながら「はい」とつぶやいた__。
高里 侑李 十九歳。
先程、病気のためこの世を去ったばかりだ。
これから人生を楽しんでいく時期だし、未練がないわけじゃない。
でも、不思議と死を受け入れることは怖くなかった。
それは、愛しい人と約束したから。
「生まれ変わったら長生きして一緒に人生楽しもうね」
その言葉がどれだけ私の支えになったか。
こんなに早く転生させられるのは想定外だったけど……。
転生希望の列に並んでダラダラと歩いていると、だんだん前の様子が見えるようになってきた。
転生希望者は、受付の係員に名前を確認された後、一人乗り用のトロッコに乗せられて次の転生先に送り出されるらしい。
『二千××年の○○行き』など、たくさんの転生先があるようだ。
その中で、私はある表示を見て疑問に思った。
『???』という行き先である。
「はてなマーク? 何だろう、あれ」
私がそうつぶやくと、前を歩いていたお爺さんが振り向いて言った。
「お嬢さん。あれは『行き先未定』の表示じゃよ」
「行き先がわからないことってあるんですか?」
「うん。中には転生出来ない輩もいる。そんな奴は、『???』を通った後またここに戻ってくるんじゃ。まぁ、ほとんどの人は普通に転生出来るらしいから心配しなくても大丈夫じゃよ」
お爺さんは、ホッホッホッと笑うとまた前を向いた。
(もし、転生出来なかったらどうしよう)
先に同じ病で逝った一つ年上の彼……花村和の顔を思い出す。
和もきっとトロッコに乗ってどこかに転生したはずだ。
(絶対、和がいる転生先に行くんだ!)
近づく自分の番に焦りを感じつつ、私は心の中でそう叫んだ。
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