第14話 ガブリエルとラファエル

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第14話 ガブリエルとラファエル

 それからというもの、私はガブリエルに会うのをためらってしまっていた。 ガブリエルの担当の日は、何かしら理由をつけて他のメイドに変わってもらう日が続いた。 しかし、ずっとガブリエルから逃げるわけにはいかない。  (今日はちゃんとガブリエル様の担当として仕事をしないと……)  今日、私は朝早くからガブリエルの部屋の外でまだ迷っていた。 ガブリエルの部屋に入る勇気がなかった。 すると、いきなり部屋のドアが開いた。 「あっ……」  私がびっくりして声を出すと、中から出てきたガブリエルも驚いているようだった。 よく見ると、ガブリエルはきちんと正装しており、どこか慌ただしい雰囲気だった。 「オリアーヌ……」  ガブリエルは、久しぶりに見る私に少し戸惑いながら私の名前を呼んだ。 しかし、すぐにいつものガブリエルに戻って私に言った。 「俺は公務で隣国に行く。帰りはいつになるかわからない。今日は他の仕事をしてくれ」 「は、はい……」 「行ってくる」 「……行ってらっしゃいませ」  ガブリエルは私に少しうなづくと、足早にその場を去った。 私は、その後ろ姿を呆然と見つめるしかなかった……。  ガブリエルが公務で隣国へ出掛けたため、私は何か他に仕事がないかと城の中を歩き回っていた。 すると、後ろから声を掛けられた。 「オリアーヌ」 「あ! ラファエル様!」  私が振り向くと、そこには優しい笑顔で立っているラファエルがいた。 「ちょっと僕の部屋に来ない? 一人でお茶を飲んでもつまらなくてね」 「えっ、でも今日私は、ガブリエル様の担当でして……」 「兄上は公務で隣国に行かれたでしょ? だから大丈夫」  ラファエルはそう言うと、遠慮している私の手を握った。 「!!!」 「さ、行こう」  ラファエルは私と手を繋ぎ、戸惑う私を引っ張るようにして自分の部屋に向かった。  ラファエルの部屋に入ると、そこにはすでに二人分のお茶が用意されていた。 そして、美味しそうなレアチーズケーキも。 「レアチーズケーキ! 美味しそう!」  先日、ラファエルと一緒に行った茶屋のレアチーズケーキに、さらに生クリームやクッキーのトッピングがされていて可愛く仕上がっている。 「シェフにお願いしたんだ。オリアーヌに早く見せたくて。笑顔になってくれて嬉しいよ」  ラファエルはそう言って、私の頬を軽く触った。 そして、顔がだんだん赤くなっていく私に、ふっ、と微笑んだ。 「こちらへどうぞお嬢様」  おどけながら執事の真似をして椅子を引いてくれるラファエル。 私は、恐縮しながらもラファエルが引いてくれた椅子に座った。
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