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第15話 本当の真実
「美味しい! 茶屋のものよりもチーズにコクがありますね!」
「僕のアレンジも加えてみたくて。兄上が『紅茶のシフォンケーキ』にこだわるようにね!」
急にガブリエルと『紅茶のシフォンケーキ』のことが話題に出て、私はまた少し落ち込んでしまった。
そんな私を見て、ラファエルが言った。
「この前の舞踏会でのこと、まだ悩んでるの?」
「えっ……?」
私は、ラファエルの言葉に驚いてレアチーズケーキを食べる手を止めた。
そんな私に、ラファエルは言葉を続けた。
「僕でよければ話を聞くよ。あの日からオリアーヌが元気がないのがずっと気になってたんだ」
私を見つめるラファエルの瞳が真剣で、全てを話してみようという気持ちになった。
「こんなおとぎ話のようなお話をするのは恥ずかしいんですが……私、実は前世の記憶があるんです」
「前世の?」
「はい。といっても、前世の記憶を思い出してからそんなに時間は経ってないんですけど」
私は、気持ちを落ち着かせるようにお茶を一口飲み、話を続けた。
「前世で恋人だった人がいて……。私も彼も若くして亡くなったんですけど、先に彼が旅立って。それで、彼が旅立つ前に私に言ったんです。「生まれ変わったら長生きして一緒に人生楽しもうね」って」
「それで、オリアーヌはここで生まれ変わったってこと?」
「そうなんです。でも、肝心の恋人がどこにいるのかわからなくて。そんな時、ガブリエル様が『紅茶のシフォンケーキ』の話をされて、私びっくりしました。『紅茶のシフォンケーキ』は私が恋人のために焼いた、彼に渡した最後のプレゼントだったんです」
「えっ、てことは兄上がオリアーヌの前世の恋人なの?」
「初めはただの偶然だと思ってたんですけど。ガブリエル様がこだわったっていう『紅茶のシフォンケーキ』のレシピを聞いた時、間違いないと思いました。そのレシピは私が前世で考えたものなんです」
「そうだったんだね……。で、肝心の兄上だけど……。まだ記憶を取り戻す気配はないのかな?」
ラファエルは、少し言いにくそうに私に尋ねた。
「はい……。でも私、舞踏会でガブリエル様とミシェル様の関係を知って思ったんです。
私、自分が恋人に会いたいために自分のことしか考えてなかったって。ガブリエル様がお幸せなら邪魔しちゃいけないですよね。それ以前に、メイドと王子様では身分も違いますし。失礼なことばかりしちゃった……」
私は、そう自嘲気味に笑ってラファエルを見つめた。
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