第19話 再会

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第19話 再会

 シロツメクサの草原で倒れたガブリエルは、使用人たちによってすぐに城に運ばれた。 未だ眠ったままだが、医者の診察では身体のどこにも問題はないという。 私は、付きっきりでガブリエルの看病をすることを申し出た。  (ガブリエル様、私のこと思い出してくれたのに……。やっと会えたのに……。(やまと)……)  寝ているガブリエルの身体に抱きつくように、私は布団に顔をうずめた……。 「侑李(ゆうり)……いや、オリアーヌか……あーもう! どっちでもいいから早く起きろ!!!」 「!!!!」  突然耳元で大声を出され、私は寝ぼけたまま飛び起きた。 ガブリエルの看病をしていて、そのまま眠ってしまっていたのだ。 私が寝ぼけまなこで辺りを見回すと、起き上がってこちらを見ているガブリエルと目が合った。 「ああ! ガブリエル様!!! 目が覚めたのですね? 良かった〜!!!」  私がそう言うと、ガブリエルは呆れたような顔をした後、少し照れたように笑った。 「ガブリエル様、か。いつもそう呼ばれているというのに、なんだか今は歯がゆいな」  (あっ)  ガブリエルが前世の記憶を取り戻したことを改めて感じると、私は嬉しくなってガブリエルに言った。 「あの……(やまと)って呼んでもいいですか……?」 「ああ」  優しく微笑んでくれるガブリエルに、私は少し緊張しながら彼の名前を呼んだ。 「やま、と、……」 「侑李(ゆうり)」 「っ……!」  (やっと会えた……)  涙が後から後から溢れ出して、私の視界がぼやけていく。 そんな私を、ガブリエルはそっと抱き寄せた。 「待たせてごめんな」 「遅いよ……でも、会えて良かった……本当に……」 「でも、まさか俺が王子でお前がメイドに生まれ変わるなんてな」  ガブリエルは、自分の胸に顔をうずめて泣いている私をなだめながらクックックッと笑った。 「笑わないで! 私もまさか(やまと)がこんな俺様系王子様になるなんて思いもしなかったし!」 「俺も、お前がこんな元気で図々しいメイドになるとは思わなかったぞ」 「もう! ふふ」 「ははは」  私とガブリエルは、久しぶりに侑李(ゆうり)(やまと)として顔を見合わせて笑った。
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