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第2話 トロッコが向かった先
「お名前をどうぞ」
受付の係員が、私に尋ねた。
「高里 侑李です」
私は、緊張で顔をこわばらせながら答えた。
係員がパソコンを操作し、検索を始める。
なんでも、死ぬ前の人生を確認するらしい。
ふむふむと言いながらパソコンとにらめっこする係員……。
どこか引っかかる部分があるのかしばらくキーボードを叩いていたが、諦めたようだった。
「ま、いっか」
係員は小さい声でそうつぶやくと、私に言った。
「五番ゲートへどうぞ」
「あ、はい!」
私は、案内係に従って五番ゲートに向かった。
ゲートは、一番から五番まであるようで五番以外のゲートには列が出来ている。
しかし、五番ゲートは誰もいる気配がない。
私は不安になり、案内係に尋ねた。
「あの……どうして五番ゲートだけ人がいないんですか?」
「うん? えーっと、私から詳しいことは言えないんですけどねぇ。とりあえず、心配はいらないですよ。大丈夫」
案内係は、笑いながら私の肩を軽くポンポンと叩くと、五番ゲートへ手を伸ばして私に言った。
「では、こちらのゲートをくぐってトロッコにお乗りください。操作は必要ありません。乗っているだけで大丈夫です。よい転生を!」
笑顔で私を送り出してくれる案内係。
(和と約束したんだもん。絶対会える……)
私は、勇気を振り絞ってゲートをくぐる。
そして、恐る恐るトロッコに乗り込むとトロッコはゆっくりとした速度で動き始めた。
だんだんと速度を上げていくトロッコに少し不安を感じる……。
「なんかジェットコースター乗ってるみたい……周りも暗いし怖いんだけど?」
そう思った矢先、私の目の前に『???』の看板が見えてきた。
「嘘っ!!! 待って! 転生出来ないの? そんなの困るんだけど!」
私のそんな叫びにもトロッコは反応する訳がなく、トロッコはそのまま『???』に向かって速度を上げていく。
「きゃああああ」
急に下り坂になって真っ逆さまに落ちていく感覚になる。
私が目を開けていられずに思わず目を瞑った瞬間、そこは光り輝く空間になり私の記憶はそこで途絶えた……。
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