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第5話 二人の王子様②
食堂から出た私が向かった場所。
トントン
「おはようございます。ガブリエル様!」
ここは、第一王子であるガブリエル王子の部屋。
私が部屋をノックしても、何も反応がない。
「失礼いたします!」
私は、返事がない部屋のドアを少し覗きながらガブリエルの部屋に入った。
ガランとしている部屋には、ガブリエルの気配はなかった。
「全く! どこに行ってしまわれたんだろう……」
部屋を明るくしようと、私はベッド横の窓のカーテンを開けようと部屋の奥に進んだ。
すると、ベッドから出てきた手に手首を掴まれた。
「!!!!」
ベッドから出てきた手は、急なことで声が出ない私の手首をそのまま引っ張り、私を布団の中に引きずり込んだ。
「ひゃあ!」
思わず変な声が出てしまうと、ベッドの布団の中でクックックと言う笑い声が聞こえる。
(こ、この声は!)
「ガブリエル様!!!」
私が慌ててベッドから降り布団をめくると、そこには笑いを噛み殺して寝転んでいるガブリエルの姿があった。
ガブリエルは、身体を起こすと私を見て言った。
「色気のねぇ女」
「なっ……!」
私が言葉を失っていると、ガブリエルは「ふわぁ」と欠伸をしながらベッドから降りた。
私は、動揺する気持ちを落ち着かせてガブリエルに言った。
「皆様が食堂でお待ちです。着替えて食堂にお越しください」
「はいはい、了解」
ひらひらと手を振り、私に背を向けて着替え始めたガブリエルをうらめしそうに見ながら、私はガブリエルの部屋を後にしたのだった。
ガブリエル・ローレン 二十三歳。
ロンジェヴィテ王国の第一王子である。
黒髪の短髪。
意志が強そうな切長の目。
すっと通った鼻筋に形が綺麗な唇。
この人もラファエルに劣らぬイケメンだ。
しかし。
先程の行いを見ての通り、自由奔放な性格で手に負えない部分が多い。
いずれは王として、この国を治めていかなければならないというのに……。
「また頭痛くなってきたかも……」
私は額を抑えて下を向きながら、再び食堂に向かって歩き出した。
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