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第6話 懐かしい味
私が食堂に戻ると、ラファエルが心配して声を掛けてくれた。
「ごめんね、オリアーヌ。僕から兄上によく言っておくから」
「これが私の仕事なので大丈夫です。お心遣いありがとうございます!」
ラファエルの言葉で、先程までの鬱々とした気持ちが晴れていく。
すると、ガブリエルがやっと食堂に現れテーブルに着いた。
食事が始まると、ラファエルは隣に座ったガブリエルに声を掛けた。
「兄上、おはよう」
「おはよ」
「兄上、あまりオリアーヌに迷惑をかけちゃダメだよ。オリアーヌは病み上がりなんだから」
「はいはい。でも、こんなに元気なら大丈夫だろ。ぷっ。さっきのオリアーヌの顔、面白かったわ」
ガブリエルは、ベッドでの出来事を思い出して吹き出した。
「さっき?」
ラファエルは、不思議そうに尋ねた。
「ああ。さっきオリアーヌが俺を起こしにきた時にベッドで……」
「んっんんん!!!」
二人の後ろに控えていた私は、慌てて咳払いをしてガブリエルを睨んだ。
ラファエルは、笑いを堪えているガブリエルと私の顔を不思議そうに見ている。
私が苦笑いをしてその場を誤魔化していると、食後のデザートが運ばれてきた。
「本日のデザートは『紅茶のシフォンケーキ』と『チョコレート風味のカヌレ』でございます。どちらかをお選びください」
執事がガブリエルとラファエルにそう尋ねると、ガブリエルが嬉しそうに答えた。
「おっ! 俺は『紅茶のシフォンケーキ』にする!」
「じゃあ僕は、カヌレにするよ。兄上は『紅茶のシフォンケーキ』が好きだよね」
「ああ。昔から好きだな。なんかこう、懐かしい味がして。言葉ではうまく言えないんだけど」
ガブリエルの言葉を聞いていた私は、「懐かしい」という言葉からあることを思い出していた。
(そういえば……和も『紅茶のシフォンケーキ』が大好きだったよね……)
私は、美味しそうに『紅茶のシフォンケーキ』を食べるガブリエルを見ながら懐かしい記憶を思い出していた。
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