第7話 紅茶のシフォンケーキ

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第7話 紅茶のシフォンケーキ

 思い出した懐かしい記憶……。  その日、私は朝から張り切って『紅茶のシフォンケーキ』を焼いていた。 入院している(やまと)に美味しいものを食べさせたかった。 そのために、一時帰宅を許された時に『紅茶のシフォンケーキ』を作ろうと前々から計画していたのだった。  出来上がったシフォンケーキを綺麗にラッピングし、うきうきしながら彼の部屋にお見舞いに向かった。 喜んでくれた彼の笑顔と、二人でお茶を飲みながら食べた『紅茶のシフォンケーキ』の味……。  久しぶりに思い出した記憶に、私はその場でそっと目を閉じた__。 「オリアーヌ……オリアーヌ……」  どこかで私を呼ぶ声が聞こえる……。 私は、ゆっくりと目を開けた。 思い出に浸りながら、そのまま少し眠ってしまったらしい。 すると、そこには心配そうなラファエルの顔が間近にあった。 「……!!!」 「オリアーヌ、大丈夫? やっぱりまだ身体が本調子じゃないんじゃない?」 「も、申し訳ございません! もう大丈夫です」  私がお辞儀をして一歩後ろに下がると、そこにはガブリエルがいた。 「!!!!」  ガブリエルは、びっくりしている私の顔を両手ではさんで言った。 「口開けろ」 「はい!?」 「早く」  訳がわからぬまま私が口を開けると、口の中に何かを詰め込まれた。 「むぐっ!?」  口に詰め込まれた物は、すぐに私の口の中でスーッと溶けていった。 「甘くて美味しい……」  それが『紅茶のシフォンケーキ』だということにすぐ気づき、ガブリエルの顔を見上げた。 ガブリエルは、私をからかうように言った。 「美味いだろ。てか、お前そんなに『紅茶のシフォンケーキ』食いたかったのか? 寝言で言ってたぞ」 「ええ。思い出のスイーツなんです……」  私がしみじみそう言うと、ガブリエルはいつもと違い神妙な顔をした。 「ふぅ〜ん」  ガブリエルはそれだけ言うと、「じゃあな」と部屋に戻っていく。 私は、その後ろ姿を見てあることを考えた。  (もしかして、ガブリエル様って……(やまと)の生まれ変わりとか!?)  安直な考えかもしれないが、少しでも(やまと)との共通点を探したかった。 記憶が戻っていないのなら、なんとかして私のことを思い出して欲しい。  この日から、私はガブリエルのことをよく観察するようになった。
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