第8話 観察開始

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第8話 観察開始

 ガブリエルが(やまと)の生まれ変わりかもしれない……。 そう考えた私は、ガブリエルの担当の日にガブリエルのことをよく観察してみようと思った。  まず、朝ガブリエルを起こす際に部屋の中を隅々まで眺める。 こうして改めて部屋を見ると、見慣れないものが多いと感じた。  (二年間王子様たちのお世話をしてきたけど、プライベートの王子様たちのこと全然知らないかも……)  興味津々で、つい仕事のことを忘れて辺りをキョロキョロしていると頬をつねられた。 「こら。人の部屋を勝手にキョロキョロ覗くな!」 「いひゃいれす! がぶりえりゅさま!」 「何してるんだ?」 「も、申し訳ございません。こうやってガブリエル様のお部屋を改めて拝見させていただくと、私が知らないものがたくさんあるなーって」  私がそう言うと、ガブリエルは意地悪そうにニヤッと笑った。 「お前。俺に気があるのか?」 「へっ?」 「俺のことをもっと知りたいならいろいろ教えてやってもいい」  そう言ってガブリエルはベッドに座り、私に横に座るよう言った。 先日の出来事が思い出されて頬が赤くなっていく。 「結構です! 失礼いたしました!」  私が慌ててガブリエルの部屋から出て行くと、部屋の中でガブリエルが笑っている声が聞こえる。  (もう! あんな人が(やまと)かもしれないなんて……)  信じたくない気持ちと、本当のことが知りたい気持ちがぶつかり合う。 私は、気を取り直して次の仕事場に向かった。           ☆  今日、私はラファエルの担当メイドとしてラファエルの買い物に付き添うことになった。 お忍びでの外出のため、私もラファエルも私服を着ている。 帽子と眼鏡で変装しているものの、元がイケメンなので道ゆく女の子たちが一斉にラファエルのほうを見る。 隣を歩いている私には、嫉妬の混じった視線が痛いほど向けられていた。  (毎回のことながら、この視線にいつまでも耐えられる自信がない……)  店で洋服を選んでいるラファエルの後ろで、私ははーっと息を吐いた。 そんな私に気づいたのか、ラファエルが私に声を掛けた。 「ちょっと休憩しようか、オリアーヌ」 「あ、はい!」  (王子様に気を遣わせるなんて! メイド失格! でも本当にお優しい方だな、ラファエル様)  心が穏やかになっていくのを感じながら、私はラファエルと一緒に私のおすすめの茶屋で休憩することにした。
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