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魔王様なので性別反転くらいお茶の子さいさいのようです
遠征から戻ってきた【将軍】アーロイスは、衝撃の展開に白目を剥きかけた。魔界を統べる王は、豪奢な椅子に座って、お気に入りの少女を膝に乗せている。テーブルにはお茶とお菓子。これだけなら別に文句はない。私生活私生活はポンコツの仕事中毒にだって余暇は必要だ。
「おい貴様、何だその格好は!?」
「静かにしろ。シュテルンの郷愁病の治療中だ」
「治療にあたるのは医者の役目だろうが! そして貴様が何故そんな状態になる!?」
先程まで泣いていたのか、目元を腫らしてスンスンと鼻を鳴らす少女を胸に抱き寄せる悪友兼魔王は今、女になっていた。本来、長身痩躯で柘榴石のような瞳に透き通るように白い肌を持ち、絶世の美貌の青年である。
しかし、今アーロイスの眼前にいる『彼』は伯母である大魔女の肉感的な色香と比べれば慎ましいが、胸も腰も尻も喉も、露出の少ない服からでもハッキリ把握できるほど、完全に女の形に変化していた。普段の近寄り難い威圧感は神秘的な蠱惑となり、そっと微笑みかけるだけで、男女関係なく勘違いさせそうだ。
「貴様は顔は文句をつけた方が惨めになる程に問題ないのだからウィリーの猿真似では事足りるだろう!」
「よして頂戴、私は誰かのママになる為にお洒落してんじゃないわよ!」
吸血鬼から反論と共に扇で激しく頭を叩かれたアーロイスは窓から飛び出し、本来の姿に戻って憤懣やるかたない火を噴いた。
――魔王様なので性別反転はお茶の子さいさいのようです!
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