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 大陸東部にあるルーグリッドの国、アリアドネの町の北側には豊かな森が広がっている。  しかし、森に入ることを許され、その恵みを得る事が出来るのは、領主に認められた僅かな人数だけだった。  まだ十七歳のアリシアはその僅かな人数の一人で、まだまだ新米の薬師だった。 「やあ、アリシア。今日もいい天気だね。素晴らしい日差しだ。そうは思わないかい?」  明るい日差しが降り注ぐ、森の奥にある小さな泉。  何時ものようにアリシアは泉のほとりにしゃがみこみ、籠を片手に薬草を摘み始めた。そこへほがらかな若い青年の声がかかり、アリシアは感情に乏しい表情で頷く。 「ええ、思うわ。もうそろそろ雨が降ってくれてもいい頃なのだけど」 「雨……それは嬉しくも悲しい、自然のハーモニー。雨は嬉しいはずなのに、君と会えないと考えると心臓が痛むんだ……」 「傷む? やっぱり大きいと傷むのも早いのかしら」 「お、大きいだなんて……破廉恥だよ、アリシア。いや、君が望むなら僕はいつだって全てを曝け出すつもりだけど……痛たっ」 「黙りなさい、この卑猥植物め」 「ぼ、僕の大事なところはちゃんと花弁で隠されているよ。アリシアになら見せても構わないけど……って、痛っ痛いって!」  アリシアは無表情のまま、手に持った木の枝で怪しげな発言を口にする植物<・・>を突いた。  そう、植物。  先ほどからアリシアの薬草採取を邪魔するお喋りな相手は、人間の男の姿をしたアルラウネという植物のモンスターなのだ。    アルラウネは基本的に女性型のモンスターだ。そのしなやかな肢体を美しい花弁で覆い、人間に友好的で交流のある村も多い。  もっとも、一昔前にはそんなアルラウネも人間から身を隠す事態になっていたのだがーー。  今はそれは関係ない。
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