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8
アリシアはいつもの夢かと思った。
泉のほとりに金の髪の男性が倒れている。でも、手を伸ばすと消えてしまうのだ。
「……ん」
声さえも出せずにいると、そのアルラウネはゆっくりと瞼を開いた。
明るい緑の瞳がきらりと輝く。
「アリシア!」
何度も夢に見た笑顔に、アリシアは息を呑んだ。
「……エディ?」
「うん、僕だよ! やっと帰って来れた! この辺りの鳥達に最近は前のように静かになったって聞いてーー」
「エディ!!」
アリシアは身を起こしたアルラウネに思い切り抱き付いた。
「あ、ああアリシア!? いけないよ、だって僕達はまだ誓いの口付けも交わしていないんだし、ああでも君が望むなら僕はーー」
「……良かった」
アリシアが泣きながら笑う。
「また会えて、良かった」
「……うん」
しばらくして、そっとエディの腕があがる。ゆっくりと壊れやすい物を包み込むように薬師の少女をーーいや、女性を抱きしめて、エディは愛おしく微笑む。
雨は上がり、木漏れ日が二人の頭上に降り注いでいた。
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