ビーナス

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ビーナス

『ワイルドビーナスもフラフラになりながら立ち上がった。しかしクラマはさらに追討ちをかけていく』  唸るような斬撃破が襲いかかってきた。 「くっそォ!」私は避けるのが精一杯だ。 「気合いを入れろォ。ビーナス。気合いだァ!」  相変わらずオヤジはマットを叩き、バカのひとつ覚えだ。   「ッるせェ。見てろよ。聖矢ァ!」  私を振った元カレの若王子聖矢の顔を思い浮かべた。  敵のクラマの顔が聖矢にダブッて見えた。 「くゥッ、魂を込めた一撃を!」  怒りをすべて拳に込めた。オーラが集中していった。 「トドメだァ。飛龍斬撃破!」  またクラマは分身し空中から必殺の手斧を振りおろした。 「ぬうゥ、喰らえェ。バーニング・サンダー!」  負けじと私もフルパワーで一撃を放った。  空中でスパークした。 「おおォーーッ」館内を歓声が響いた。   『ワイルドビーナス、必殺のバーニングサンダーが火を吹いた。斬撃破と激突だァ!』  実況アナも絶叫した。  轟音とともに両者の技が相討ちになった。 『両者ダウン。両者ともにマットへ叩きつけられた』 「ワン、ツー」  レフェリーがダウンした二人のカウントを数えた。 「立てェ、ビーナス。気合いじゃァ。気合いを入れろォ」  オヤジも必死にマットを叩き声援を送ってきた。 「ううゥッ」もちろん私も負ける気はない。  けれど斬撃破の衝撃で身体の自由がきかない。 「クラマァ。立てェ、お前の勝ちなんだ!」  敵のセコンドも必死に声援を送った。  クラマはコーナーマットをよじ登って立ち上がった。 『おおォーックラマは立ったぞ。カウントはセブンだ。勝負は決まったのかァ!』 「いつまで伸びてる気だァ。()てェ。ビーナス。気合いじゃァーーー」  またオヤジが絶叫した。 「るっせェ」  
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