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ビーナス対クラマ
メインイベントのゴングが打ち鳴らされた。
『まさに団体の垣根を越えて両雄が対峙した。果たして、最強の覆面女子レスラーはワイルドビーナスか。それとも女忍者クラマか?』
「ビーナス、ビーナス、ビーナス」
「クラマ、クラマ、クラマ」
観客席は一気にヒートアップした。両軍、入り乱れての応援合戦だ。
闘道館にお互いのコールが鳴り響いた。
両者ともオープンフィンガーグローブを着用し格闘技色が色濃い。
「ビーナス。気合いだァ。気合いを入れろォーーーーッ」
セコンドのオヤジは興奮してマットを叩いた。
「うるせーよ。まだ始まったばかりだろォ。オヤジは気合いが空回りしてんだよ!」
『ここ日本闘道館は、まさに興奮のるつぼと化した。ワイルドビーナス対女忍者クラマの対戦は予想通りどちらも一歩も引かない白熱した一戦になった!』
序盤から目まぐるしい展開だ。
プロレス技はあまり出ない。
打撃中心だ。
私は軽快にステップを踏み、ローキックを放った。
挨拶代わりと言って良いだろう。
ボクシングのジャブ同様、距離感を掴むためだ。
キックアンド・関節技が私のプロレスの持ち味だ。
元々、古武術の十六夜流を学んでいた。
空手と柔術をミックスしたような日本古来の武術だ。
十六夜流は他流派との闘いを禁じていたので女性覆面レスラーとしてリングに立っていた。
だが相手のクラマもひと筋縄ではいかないようだ。
私が得意のキックを炸裂させれば、クラマもスピードで撹乱させた。
『おおォ、クラマの幻影殺法だ。三人、四人と分身していった!』
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