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ビーナス対クラマ
まさに諸刃の剣だ。
「行けェ。ビーナス!」
「クラマァーッ!」
両陣営もヒートアップしていった。
観客を魅せることもプロレスでは大事だ。
このまま敵とお見合いを続けていても仕方がない。
それは敵のクラマも同じことだろう。
「ふぅん、一気にカタをつけてやるわ」
クラマも意を決したようだ。
不意に彼女の全身が揺れた。
クラマの身体が分裂していった。分身だ。
「来い。クラマ!」
私も拳に気合いを込めた。全身に真っ赤なオーラをまとった。
「ツッああァーーーー」
分身した四人のクラマが宙を舞った。
「喰らえェ、飛龍斬撃破!」
雷撃のように切り裂く手斧が降り注いできた。
「ッりゃああァーーーーッ!」
私もマシンガンキックで迎撃だ。
空中で両者の必殺技が激突した。
「おおォーーーーッ!」
割れんばかりの歓声が響いた。
すでに観客も総立ちだ。
「グッワァーーーーッ!」
クラマの手斧が私の全身を切り裂いた。
したたかにリングのマットに叩きつけられた。
『ダウン。ワイルドビーナス、クラマの必殺斬撃破を喰らってダウンだァーーーー』
「おおォーーーー」
また歓声が轟いた。
「立てェ。ビーナス。気合いだァーーーー」
セコンドのオヤジがマットを叩いて喚いた。
「うッううゥ……」
私は意識朦朧だ。しかしまだ戦意は失っていない。
「はァはァはァ」
しかし敵のクラマも消耗が激しい。
やはり分身はかなり体力を消耗するようだ。
肩で息をしていた。
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