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ラブリ
「ええっと、悪いけど別れようと思うんだ。ボクたち」
彼はオドオドして私に告白した。
「えッえェーッ、なんでよ。突然、どうしたんだよ。聖矢さん?」
いくら何でも急展開すぎるだろう。
プロポーズをしてくると期待していたのに。
「だってキミ、あのポンコツレスラー、ワイルド・リッキーのひとり娘なんだろう?」
「うッ、それは」
どんなに隠していてもいつかはバレるモノだ。
「おまけに女子レスラーだって言うし!」
「えェ?」そこまでバレたのか。
「ママが女子プロレスラーと付き合っちゃイケないって言うんだ」
「はァ、ママだとォ?」
なんだ。そりゃァ。
確かに私は覆面女子プロレスラー・ワイルドビーナスだ。
「ゴメンよ。ボクは女子プロレスラーでもラブリさんは優しいから大丈夫だって言ったんだけど。ママが」
「はァなにが、ママだよ。小学生かァ!」
マザコン野郎が。なんだか、幻滅だ。
一気にカエル化現象だ。
「ゴメンよ。でもボク、ママには逆らえないんだ」
「ふぅん、わかったよ。じゃァ一発、殴らせろよ」
私は彼の目の前でギュッと拳を硬く握った。
数多の女子レスラーをマットへ葬り去った鉄拳制裁だ。
「いやァッボク、困るよ。ママにも殴られたことがないんだ」
途端に彼は及び腰だ。
「どんだけマザコンだよ。ッざけんなよォ」
私は思いっきりパンチを振りかぶった。
「ひいィ」彼は悲鳴を上げた。
「その伸びきった鼻っ柱を叩き折ってやろうかァ!」
「ゴメンよ。頼むから顔だけは殴らないでくれよ。ラブリさん、お願いだよ」
とっさに彼は顔をガードして泣き叫んだ。まったく男のクセに情けない。
私は思いっきり彼氏の顔面にパンチを放った。
「わァーーッ」
思わず彼氏は悲鳴を上げた。
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