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ぬいぐるみ
残していくものは、別の業者さんに引き取ってもらうようでした。
我々が運ぶのは洋服とか本とか、個人的なものをまとめた荷物なので大したことはありません。
そしたらね、ウチの若いのがふと聞くんですよ。
「社長、あのぬいぐるみも置いてくんですかね」って。
見ると確かに大きな犬のぬいぐるみがリビングにありましてね。大人でも両手で抱えないと持てないぐらいの大きさでした。その、犬の種類までは判りませんですけどね。
でもそういうのって年齢問わず、けっこう大事なものじゃないですか。特に女の人は。
だから奧さんに聞いてみたんです。このぬいぐるみは持ってきますかって。
そうしたら奧さん、顔しかめて「いりません!」って言うんです。
即答ですよ、もう。
私も娘いるから判るんだけど、ぬいぐるみってけっこう値段するでしょう? それなりに想い出もあるでしょうにね。まだ綺麗なのにもったいないなと。
要らないのなら、それこそ持って帰って娘にあげたいぐらいでしたが、まさかそんなことするわけにもいきません。
だから仕方なくリビングに置いたまま、他の荷物積んでトラックを発進させたんです。別におかしなことは、何もありませんでした。
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