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黒瀬で陸に会ってから、もうすぐ1年になる。
そんなことを考えながら、5人でお店に入った。
お店のスタッフに案内された席は、テーブル席の個室で、飾ってある絵画に見覚えがあった。
思わず部屋の左右を見渡す。
「5人以上は、12人用の個室しかなかったから、広いよね」
わたしの挙動に、吉崎さんが答えた。
「みんな早く座って」
吉崎さんが仕切って席を決める。
「倉田さんも、立ってないで座って」
理由があるわけじゃない。
単にそこに立っていたから、近くの席に座るように言われただけに過ぎない。
菱賀さんの食事会を思い出した。
誘われて食事に行った時は、いつも隣の席は菱賀さんで、途中で変わったりしても、左右とも隣は年配の選手や、コーチだったり、今里さんのように引退した選手だった。
話すには遠い席に若い選手が座っている。
だからあの日、陸が隣に座るのはめずらしいことだった。
今、あの日と同じ席にわたしは座っていて、陸が座っていた席に木山先生が座っている。
「先生方はいつ呼び出しがあるかわからないということで、女性だけで飲みましょう!」
「あの、吉崎さん、僕も呼び出しはないので飲みますよ」
「だったら、田村先生は飲むということで。飲めないのは木山先生だけですね」
「すみません、わたしはお酒が飲めないので」
「中村さんは飲めないんだぁ。倉田さんは飲むよね?」
「あ、はい」
吉崎さんがいそいそと注文をまとめた。
「倉田さん、どうかしましたか?」
木山先生が心配そうな顔をしてこちらを見ていた。
「いえ、ちょっとぼんやりしていただけです」
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