ある小学校の七不思議

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   しかし、いくら警備員さんと仲良くなっても夜中に小学校に入れるわけでは なかった。  でも大学二年の夏休みに僕にチャンスが来た。チャンスと言ったらあの警備員のおじさんに申し訳ない。あの人が急病で入院することになったからだ。一ヶ月以上かかるらしい。  急なことで次の警備員さんが来るまでの三日間、僕が警備を任せてもらえることになった。  サッカーチームでの手伝いという実績があったし、大学も真面目に通っているし、おばあちゃんの知り合いというツテもあったからだ。  僕は警備の経路ややることが書いてあるマニュアルをじっくり読んで真面目に取り組んだ。  昼の小学校はもちろん、夜の小学校も特に怖いとは感じなかった。怪談などの怖い映画や動画をいろいろと見たせいだと思う。  引き受けた仕事だから真面目にマニュアル通り校内の見回りをするが、何もなかった。がっかりしたがまだあと二日ある。  二日目の夜も何もなかった。  最後の夜、期待半分諦め半分で見回りを始める。かすかにピアノの音と歌声のようなものが聞こえる。  七不思議かと期待しながら音楽室へ向かう。僕の足音が聞こえたのかピアノの音が止まる。それからはゆっくり音を立てないように音楽室へ向かう。  ピアノの音は聞こえないままだが静かに音楽室のドアを開けると、ピアノの前に若い女の人の幽霊が座っていた。  声を出さないように口を押さえて見ていると、しばらくして幽霊がピアノを弾きながら歌い出した。それを聞いて僕は衝撃を受けた。僕はただ幽霊が消えるまで見ているだけだった。  我に返ってから、警備の巡回の続きをする。歩きながら後悔した。驚きすぎてスマホで動画を撮るのを忘れていたからだ。証拠がなければ僕の話を信じてもらうことはできないだろう。でも僕は、音楽室での出来事をちゃんと伝えるべきだと思った。僕の遭遇した出来事を。    誤)夜中に音楽室で歌劇団の歌姫がピアノを弾きながら歌っている。             ↓  正)夜中に音楽室で若い女性がピアノを弾きながら歌っている。  ピアノを弾きながら歌っているのは歌姫ではなくただの若い女性だ。  歌姫があんな音痴なわけがない!!
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