ある小学校の七不思議

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 僕の通っている小学校にも学校の怪談の定番の七不思議がある。でも他の小学校とは少し違う。  小学校のある場所には昔、歌劇団の練習場があったので戦争中に亡くなった歌劇団の団員が七不思議に出てくる。  七不思議のうち三つはどこの小学校でもありがちな話だが、他の四つはありがちな話にこの小学校独自の設定が加わっている。 (一) 音楽室に貼ってあるベートーベンやモーツァルトなどの肖像画の目が                 動く。 (二) 夜中になると階段の段数が十二段から十三段になっている。 (三) 夜中に体育館からバスケットをやっているようなボールの弾む音がす       る。 (四) 階段の踊り場にある大きな鏡を見ると血まみれの団員たちが歌を歌っ       ている。 (五) 夜中に理科室の骨格標本が戦争中に中止された歌劇団の演目を踊り出     す。 (六) 夜中に歌劇団の歌姫がピアノを弾きながら歌っている。 (七) 校門の横の桜の木の下に亡くなった劇団員が埋まっていて、その人の        幽霊がでる。  七不思議の話をするとおばあちゃんはでたらめだといつも言う。 「昔、歌劇団の練習場があったのは本当だけど、戦争が始まるとすぐ上演は中止されて、歌劇団は解散したのよ。歌劇団の偉い人が軍の幹部と知り合いでよくないと言われたかららしいわ。だから戦争で亡くなった人はいるけど歌劇団とは関係のない人よ。このあたりが攻撃されたとき歌劇団はもうなかったはずよ」  おばあちゃんは小学校に知り合いがいるのでその人に聞いたらしい。  僕は夜に小学校を見回りする警備員さんに話を聞きたかったが、僕が小学校にいる時には警備員さんはまだ来ていない。結局、一度も話を聞けないまま小学校を卒業した。  ☆  ☆  ☆  七不思議が気になって仕方なかった僕は高校生になって地元の子どもサッカーチームの手伝いをするようになった。そのサッカーチームは小学校のグランドで日曜日に練習をしているからだ。  日曜日に小学校に出入りしていると警備員のおじさんと話ができるようになった。警備員さんは平日は夜間だけだが小学校が休みの日は昼間もいるからだ。 「この小学校の七不思議って知ってますか?」 「ああ、歌劇団が昔あったから歌劇団の団員の幽霊がってやつだよね」 「そうそれです。見たことありますか?」 「俺は五年ここで警備を担当しているか見たことないなあ。でも、同僚は夜中にピアノの音を聞いたと言っていた。聞き間違いだと思うけどね」  僕はワクワクした。初めて七不思議の実態に迫ったのだから。  
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