君の血は甘い。

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あとから母から、綾兄は当時付き合っていた恋人を刺し殺して捕まったと聞いた。

綾兄は自ら警察に出頭して即逮捕だったらしい。

恋人を刺したあと、本人は殺してしまった衝撃と懺悔で呆然と立ち尽くしてしまいましたと供述、と地方新聞に書いていた。

動機としては揉めて勢いで刺してしまったとよくある感じに書いているけど、綾兄が人に対して怒る姿が思い浮かばない。

私が見ていた綾兄は表面上にしか過ぎなくて、裏では危ない人だったのだろうか。乱暴をする人だったのだろうか。

私と公園で落ち合ったことも書いてなければ、警察が私に取り調べも来ていない。

私は誰にもあの夜のことを話していない。
真夜中の少し変わった幻覚として残したかった。

誰かに話すとどんどん現実味が濃くなる気がして怖くなる。

それに私は共犯者でもなければ悪いことはしていない。