君の血は甘い。

1

両親があまり離れたところだと何かあった時に助けに行けないからと理由で、隣県での進学になった。

それでもようやく誰も知らない土地で生活をすることが解放のように思えた。

仕送りも貰いバイトをしながら生活費を補い、無事に卒業した。

新卒で入った会社は一般事務だったけれど、飽き性の私は3年くらい働いて辞めた。
人間関係は悪くなかったけど、単調すぎてやる気が起きなかった。

その次に入った会社で隆也と出会った。

これで私の人生は安泰だと思ったのに。

綾兄が戻ってこなければ私はこの地で恋人と共に平和に過ごせたのに。

気分転換に遠回りをしても家が近づいてくる。
今どんな顔をして隆也に会えばいい？

時間稼ぎに用のないコンビニでお菓子を買い、家に着いた。