38話 傷口に口づけを

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別々の運命の赤い糸を たちきった二人だから 何かを信じることも 何かに縋ることも きっと昔みたいにいかないと 若かったと振り返り 積み上げていく 青春と言われた恋が 切ないくらい想い出されるのは きっと引き裂かれた心を 少しずつ癒しながら 夢をみることを 誰かを心から信じることを どこかに忘れたくないから 未来の僕はどう思うかな? なんて もうどうでもいいこと 二人若くないやり直せる恋を 本当は疲れやつれた手を伸ばし 力ない力で握り締めただけ お互いの力ない力で笑顔を作り 人生を歩みながら 折れた心を無理矢理紡いだ それでも やり直せる恋は ここに存在したことを お互いの傷口を引き裂き知った 力ない力を振り絞り 引き裂かれた傷口から 溢れた血液を飲み込み 今以上の言葉を しっかりと嗅ぎ分けて また歩き出せる力を知った 君のために なにかをしてあげたいなどと 疲れた君のために 何かをしてあげたいなどと 自惚れが出来るほど若くはなく お互い傷ついている 二人その傷に爪を立て 痛みで貫かれる心が 二人導く場所を探して 二人導かれる場所を知るため お互いの傷口を引き裂き そこにある生々しい傷口を しっかりと見つめ重なり 互いを互いで 足りない二人を償いながら 傷口にそっと口づけをしよう そうお互いの生きている証 赤く染まる血液を しっかりとしっかりと 受け入れるために 別々の運命の赤い糸を 断ち切った二人だから 何かを信じることも 何かに縋ることも きっと昔みたいにいかないと 若かったと振り返り 積み上げていく そうお互いの生きている証 赤く染まる血液を しっかりしっかりと 受け入れて歩き出す 二人の傷口にそっと唇をあて 二人の痛みを受け入れながら ゆっくりゆっくり導かれた道 二人の傷口にそっと口づけをして 二人歩き出す導かれし道へ
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