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そして、僕が見えるのは精霊だけではない。
「おや?縁結びのお守りかい?なら、あたしが力を貸してあげようね」
僕にそう語りかけながら、参拝者の少女が手にしたお守りに、そっと手を翳す――明るい橙色の着物を身に纏った豪奢な美女。
彼女の名前は天照大御神。
泣く子も黙る日本神界の頭領にして、我が神社の御祭神様だ。
そう、僕は精霊や霊だけではなく、実は神様すらも見え、会話が出来てしまう特異な霊感の持ち主なのである。
この霊感のせいで、僕は色々昔から大変な目にあって来た。
だが、それ以上に沢山の精霊や神々と言葉を交わし、縁を紡いで来たのだ。
だからこそ――その縁をより未来へと繋いでいく為に、僕は神職を目指し、日々修行しているのである。
「ありがとうございます。助かります、天照様」
天照様に微笑みながら頭を下げると、少女にお守りについての説明を始める僕。
彼女は、どうやらお守りを気に入ってくれたらしく、説明が終わると僕に頭を下げ、嬉しそうに両手で包み込む様に――お守りを大切に持って社務所の方に走って行った。
(やっぱり、自分で説明したものを気に入って貰えるのは嬉しいな)
そんなことを考えながら、僕はぐるりと境内の散歩兼掃除を始める。
と、やけに同じ制服を着た集団が多いことに気がついた。
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