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その後、事故の目撃者ということで警察に連れて行かれた僕。
僕はそこで色々と質問をされ、結局解放されたのは真夜中に近くなってからだった。
「……はぁ、疲れた」
ぐったりしながら、鳥居を潜ろうとする僕。
と、そこに誰かが立っているのに気がついた。
「よぅ、あんたが事故の目撃者かい?」
気さくな調子で僕に話しかけてくる人影――それは、20代後半位の見知らぬ青年だった。
彼は柔和に微笑みながら、ゆっくりと僕に近寄ってくる。
「なぁ?あんた、昼間に子供の交通事故を目撃したんだろ?」
柔らかい話し方だが、どこか沈黙を許さない――圧のある話し方だ。
僕は彼の言葉に静かに頷きながら、彼をじっと見つめてみた。
所々無造作にはねた黒い髪は長く、腰のあたりで紫色の組紐で一つに結んでいる。
身長は150センチの僕よりかなり高い。
肩幅もがっしりしていて、体格はうちの素戔嗚様といい勝負かもしれない。
ここまでは、さして『普通の人間』と変わりはないだろう。
だが、彼の服装が――通常の人間とはかなり異なっていた。
彼は、黒地に大きく純白の龍や牡丹が描かれた派手な着流しを、着物の上に外套の様に羽織っていたのである。
しかも腰には、本物かは分からないが、刀を佩いていて――。
(……何か、危ない人かもしれない)
僕は、刀から視線を外せないまま、息を呑んだ。
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