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そうして、5人であの少女のお見舞いに行ったのだが――。
久しぶりに――尚且つ、「彼女自身の肉体」では初めて顔を合わせた少女は、お見舞いに来た僕達の姿を認めるや、柔らかく微笑んだ。
「そろそろ来る頃だと思っていたわ。で、聞かせてくれる?神様達。あの時最後まで聞けなかった……私がこの世界に生きる意味があるのかどうかを」
穏やかな表情を浮かべながらも、言葉は鋭くそう切り込んでくる少女。
僕はそんな彼女の前に一歩進み出ると、胸を張り、堂々と答えた。
「生きる意味は、絶対にある。確かに、今までは辛かったかもしれない。それは否定しないし……そもそも、君が今までに感じた「辛さ」は君にしかわからないものだから……。……だから、それをどうこういうつもりはない」
少女の漆黒の瞳を見つめながら、そう自分の考えを伝えていく僕。
「君がとても辛い境遇にいたのは、理解出来る。でも、それは過去のことなんだ。少なくとも、「今」の君は生きてる。生きてるからこそ、君の時間はどんどん前に進んでいく。その、前に進んでいく時間……例えば、今からやって来る未来なら、変えていけるんじゃないかな?きっと」
そう、これは紛れもない僕自身の意見であり、本心だ。
「過去は絶対変えられない。いや、過去が今の君を作っているのだから……どんなに偉い神様だって、簡単に変えちゃいけないと僕は思っている」
少女から瞳を逸らさず、そう続ける僕。
「どんなに辛い経験……苦しい経験だって、それがあったからこそ、今の君がいる筈なんだ。今だって、そうなんじゃないかな?大変な思いは沢山したけれど……あの異世界での経験があったからこそ、僕達と君は出会えた。僕は君に出会えて良かったと思ってるよ。心から。だから――」
僕は彼女の瞳を見つめたまま、祈る様な気持ちで言葉を紡いだ。
「君にも、生きることを……前を向いて歩いていくことを、諦めて欲しくない。今はまだ苦しいかもしれないけれど……辛い経験に負けず、1日ごとにそれを乗り越えて行けば、きっとまた、新しい出会いや出来事がある筈なんだ。そうやって、生きることと出会いを積み重ねていけば……大人になって後から振り返った時に、過去を捨てなく良かったと笑える日が来るんじゃないかな。きっと。いや、そうしてみせる。僕が」
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