337人が本棚に入れています
本棚に追加
少女の瞳を怯むことなく真っ直ぐに見つめ、気持ちを込め、彼女の心の奥底に――そこにある凍ってしまった部分に届く様にと祈りながら、僕はそう告げる。
正直、どう話したら良いのか……どんな言葉をかければ彼女の心に届くのか、悩んだこともあった。
容姿のせいでいじめられた過去を話そうと考えたこともある。
(でも、安易な同情は、きっと彼女も望んでいない筈なんだ……)
そう悩んだ末、僕が辿り着いたのは――もしかしたら、「過去ではなく未来に対する言葉」なら彼女の心に届くのでは、という考えだった。
(あの子は散々苦しんだ。今は折れてしまっているけれど……本来は、その環境にも負けず、1人でここまで戦って来た強い心の持ち主なんだ)
少女の境遇を思い、そういう結論に達した僕。
正直、ここまで頑張って生き抜いて来た少女に、もっと頑張れというのは気が重い。
テレビや雑誌などでも「今まで頑張って来た人に「頑張れ」というのは逆効果だ」と言われているのを見たこともある。
それでも僕は、彼女に死んで欲しくは無かった。
自分の命を――彼女自身の人生を、ここで諦めて欲しくはなかったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!