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僕は自らそういうと、先ずは自分が最初に名乗り出る。
「僕の名前は西澤悠理。ここの息子で、神職見習いなんだ。よろしくね!」
少女は僕の言葉に小さく頷くと、凛と澄んだ声で自らも自己紹介を始めた。
「こちらこそよろしく、悠理。私の名前は三上梓。中学2年生よ。あなた達に出会えて、本当に良かったわ」
少女――梓が微笑みながらそう告げると同時、柔らかな風が僕達の間を吹き抜ける。
その風に合わせて大きく木々を揺らし、祝福の花びらを降らせてくる境内の桜の精霊達。
「綺麗……」
梓は花吹雪に思わず微笑んだ。
「だろう?うちの自慢の桜なんだ。でも、これからは、もっと沢山綺麗なものや素敵なものを君に見せると約束するよ」
僕は梓の隣で桜吹雪を見上げながら、彼女にそう語りかける。
「ええ、ありがとう。心から、期待しているわ」
花を見上げたまま、微笑みながらそう答える梓。
すると、僕の肩にいつの間にかちょこんと乗っていた桜花がちゃっかり口を挟んで来た。
「綺麗なものの前に、まずは転校やお引越しの準備だけどね!」
桜花のもっともすぎる意見に思わず苦笑する僕ら。
(でも……。今の僕達なら、きっと大丈夫だろう)
なんせ、あんな大冒険を成し遂げた後なのだから。
あの命を削る様な体験の後ならば何でも出来る様な気がするから不思議だ。
「大丈夫。もし、あんたの両親がうだうだ文句をつけてきたら、あたしが神罰を下してやるよ」
力強い言葉をかけながら、あたたかい笑顔を向ける天照様。
梓は、嬉しそうに微笑みながら、大きく頷いた。
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