優しさと強がりと

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優しさと強がりと

 今日は朝のレッスンが長かったからひるげの時間まで押したせいでなんだか疲れてしまった。ひるげまではあと少し。 「王子様?早く稽古をしに、一緒に森へ参りましょう。」  スカイが急いでこちらにやって来た。 「ん?こんな時間に今から?」 「え?だって…。王子様が森に行きたいのではないのですか?」  当然だと思っていたスカイはララにそんな風に言われてしまったので気まずそうに言い訳を続けた。なんだか少し顔が赤いのは気のせいだろうか。 「随分一人で張り切ってるな…」 「城の中で暴れ回るには狭すぎますゆえ。それに、剣術は条件の悪い環境で稽古をつけてこそなのです。この安全な城の中で剣を振るう事になるなど、この先、殆ど無いでしょうから…」 「まあ、それもそうか…。」 「それに、息が詰まるのでございましょう?やんちゃな王子様には自由な森が似合っておられる」 「ふん。言いたい事ばかりいうやつめ。その憎たらしい口は遠慮という物を知らぬのだな。」 「ではおやめになって今からおとなしくじっとして書斎で本でも読まれますか?」 「いく。行くに決まってるだろう。行くからすぐに支度せよ」  不貞腐れつつ、このスカイがこうしてそばに居てくれるお陰で、前のように一人で隠れて抜け出す必要もなくなった。いつでも自由に堂々と森に行けることに内心嬉しくてたまらないのだ。  あんな風にどや顔されるのが少し癪だけれど。ばあやもスカイがいればそれも許すのだからやむを得ない。  だけどなんだか自分よりもスカイの方が森に行くのを楽しみにしているように見えてなんだかおかしさが込み上げてくる。  時々稽古に加わる優しく穏やかな兄のエドはただ優しい笑顔でそんなララを見守る。優しくて気の弱い兄のエドよりも負けずぎらいのララの方が剣術の覚えは早かった。  二人の剣の師匠として日々、スカイが剣術の稽古をつけ、時には師匠として、そして姫の護衛としていかなる時もスカイはララのそばを離れず近くで見守っていた。 * 「王子様?よけてばかりでは勝負になりませんぞ?!」  挑発するような意地悪な目とその口がララを煽る。 「だって打たれたら痛いじゃないか。」  さっきから打たれるのが痛くて剣をよけ、逃げてばかりいるのはララもよくわかっている。 「今日は正しく打たれる練習です!」  スカイの木刀が体に当たるとそれはそれはとても痛かった。  アザだらけになりながら今日も森での稽古を終えた。  こんなに手加減なく稽古してくるんだからやっぱり私を姫だとは思っていないのだろうなと今さら思う…。  なんだかそれを少しだけ残念だなんて思ってしまっている自分に気づく。
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