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獣の王
そんなある日、向こうの山のその奥からあの獣の王の遣いの者がついに我が国にもやって来た。
「こちらに美しい姫がいると噂で聞いたが本当か?先日の誕生祭の宴の招待状がこちらには届かなかったが?」
「いえ、姫ではありません。王子です。」
「嘘じゃないだろうな?」
「ではお目にかけてご覧にいれましょう。」
姿を現したララは髪を短く刈り込み凛々しい王子の装いで現れた。その日はちょうど兄が体調を崩して寝込んでいた。
ララはその遣いの者の前で剣を振り回し、逞しく勇ましい剣の舞をその遣いの者に披露した。剣先がその遣いの者の鼻先を掠め遣いの者が腰を抜かしそうになった。
「わ…わかりました。もう…結構でごさいます。姫ぎみのように美しくてお強い王子様がおられたと王にはそう伝えます」
そう言って遣いの者はいそいそと帰っていった。
すると後日、王が家来たちを引き連れて直々にやってきた。ベラが心配そうに見守る。
「美しい姫のような顔をした王子だったと聞いたがその王子はどこだ?今日はその美しい王子とやらの顔を拝みに来たのだ。」
向かい合う王様の顔が歪む。
「早く王子に会わせろ。その美しい王子はどこだ?」
もう、誤魔化す事は出来ない。
仕方なく前に進み出た。兄さんを行かせる訳には行かない。なぜなら兄さんはこの城の跡取りなのだから。
「私だ。」
ララが前に一歩進み出た。大切な兄からその獣の王の目をそらしたい一心で。
「ほう、噂どうりの美しい姫のような王子だ。この際、王子でも構わぬ。そなた、私の物になられよ」
「そなた今なんと申した?王子でも構わぬと?この王子を嫁にくれと申すか?」
王様が驚いた顔で獣の王に問い返す。獣の王のすぐそばにララがいるため容易に手出しは出来ない。
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