秘めた想い

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秘めた想い

 獣の王が攻めてくる心配もなくなり城に平穏が訪れたある日。 「ねぇスカイ、あなたは何を生き甲斐に生きているの?」  なんとなくそう質問した。 「私は隣国で生まれた時からずっと王子様のお側で仕えて参りました。  私の師匠である育ての親は王様の護衛をしておりました。そんな彼に身よりの無い私が拾われました。幼少期より当たり前のように彼から剣術を習い、同い年の王子様のためにお側について兄弟のようにお守りしながら育ってきました。  私の主人であられる王子様がお妃を迎えられる。私はそのお妃様の護衛として送られ15歳になるまでお守りし無事に王子様の元へお連れする事を王様から仰せつかったのです。  初めは隣国の王子様の護衛と剣術の指導という名目でここへ来た、けれど私は気づいてしまった。その王子様が姫様である事に。だからすぐにベラに問いただした。先にこちらに参っていた乳母であるそば付きのあの者に。   すると彼女は隠す事なく私にその真実を明かし、私がここへ来た本当の理由を教えたのです。  あの方は将来、王子様の妃として迎え入れる事になっている姫である事と。   私がここにいる意味と。    そしてベラ様はそれを見届け、見守るのが務めだという事。  私はそれが何より誇らしかった。  ですから私は王様の命に従い仰せつかった役目を果たします。そして行く行くは私も隣国に戻り、王子様に生涯お仕えするのが私の夢であり、それが私の生き甲斐なのでございます。」 「ふーん。」 「ねぇ、それで?いつから知ってたの?私が女だって。」 「それは…どうでしょう…  獣の王の前でご自身でそうおっしゃられましたし。」 「それも、そうか…」  なんだ…。  生き甲斐…、か…。  私の生き甲斐は果たして何だろう。  今、私は…。  彼に何を期待したんだろう…。  
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