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「姫様?明日は近隣諸国からお客様たちを招いて盛大に宴が催されます。
姫様の15歳の誕生祝が、ついに執り行われるのです。この日のために日々様々な花嫁修業やお勉強に励んでこられました。
初めて姫としてのお姿が、足を運ばれた近隣諸国の王たちにお披露目されます。
隣国の王子様との婚約式をその場でなさる事になりますゆえ。
どうか明日は気品溢れる姫ぎみらしい立ち振舞いをなさってくださいませね?」
またそうやってばあやが説教じみたことを言ってくる。
今まで散々、王子としてバレないように振る舞えと言われて育ってきた。
それなのに今さら気品溢れる姫ぎみらしい立ち振舞いをだなんて。
「男として育ってきた王子のこの私に今さらどうしろと?」
「姫様…。」
「私は姫様なんかじゃない。男として兄さんの影武者として身代わり王子として今まで生きてきた。私はこの国の第二王子だ。この世に歓迎されずに生まれてきた。顔も知らない仮面の王子に差し出されるくらいなら私なんか生まれて来なければよかったのだ。」
「それは違います。姫様。」
「何がどう違うの?」
「全ては姫様の幸せのためなのです。姫様のその尊いお命をお守りするためなのでございます。」
「うそ。私の幸せな人生を生きる道なんかここには何一つなかった。いつだって王子として兄の身代わりだった。そんな私にはこの先も女としての幸せなんか無いんだもの。人を愛する事さえも許されない。こんなにも愛おしいのに恋も出来ない。」
「いま、何とおっしゃいました?」
「だから、私には愛おしい人を愛する事さえも許されないって言ったのよ!」
「愛おしい人…もしや、姫様もその方をお慕えしていらっしゃると?」
「た…例えば、例えばの話。
王子の私には殿方と恋する機会すら無いのだから。
どうせ明日は国同士が決めた愛のない結婚に向けて婚約をさせられるんだもの。私には恋をする権利もない。」
困った顔のばあやに八つ当たりした。こんな事したって無駄なことくらいわかってる。こうなったのはばあやのせいじゃないのに。
全ては国王が決めた事。今さらどうにもならない。もはや自分だけの問題ではないのだ。国と国との問題にまで発展しかねない国事なのだ。
ばあやを困らせたまま刻一刻と時は流れ、いよいよ宴が始まる…。
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