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 仮面を着けた隣国の王子様がついにやって来た。隣国の偉大なる王様のあとに続き、怪しげな仮面が俯きフロアに顔を出した。 「はじめまして。」  仮面の王子様がそばで挨拶をした。カラカラと転がるような爽やかな声。第一印象は悪くない。 「その仮面の下のお顔は本日見せていただけないのね。」 「はい、婚礼を挙げるまではお見せすることはできません。」 「どうして?」 「わたしを見たとたんに拒まれては困りますから。親が決めた婚礼です。私達に拒む権利はない。」 「なら、同じことよ。見せてくれてもいいんじゃないかしら?いずれにせよ私には拒否権が無いんだもの。我が国を守るために私はこうしてあなたの国に差し出される運命なんだから。」 「しかし…いまお見せすることは出来かねます。」  彼がそう言って去っていった。だけどどうしても見たかった。あの仮面の下の素顔を婚礼の前にどうしても見たかった。だから…。  彼が化粧室に向かう後を密かに追った。トイレで用を済ますのに、きっと仮面を外すに違いない。  手洗いのそばで立っていた王子様は予想通り、その仮面に手を掛けた。  壁の陰から顔を出しそっとそんな彼を覗き込んだ。  するとそこには爽やかないで立ちの真面目そうな凛々しい青年が立っていた。スッキリとした顔立ちは美男子とまではいかないがいかにも誠実そうな目をした若い男だった。  なんだ、普通じゃない。仮面で隠すほどの事もないのに…。 「あ!」  いつの間にか振り向いた彼が私に気づいた。 「姫ぎみ!もしや見てしまったか?私の顔を…」  
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