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石造りの城郭の入り口であるアーチ状の門の近くまで来ると手綱を引き立ち止まった。
馬を降り門の脇の物陰にいそいそとよけた。
向こうでは強靭な門兵が二人で槍を持ち城の門番をしている。彼らにこの顔を見られては不味いのであわてて背を向け俯いた。
「娘?助かった。ありがとう。」
目を合わせようとしない事に首をかしげながら若い男は門兵と話をして中に入っていった。
*
「ララ様!また隠れて城を抜け出して森に行かれましたね!?」
ばあやの金切り声が響く。
「そんな薄汚れたお姿で!今すぐ湯浴みをして早くお着替えなさいませ。すぐに先生がいらしてしまいます。」
「もうわかった。そんな声出さなくたって聞こえてる。」
しぶしぶ着ていたものを脱ぐ。
平らだったはずのこの胸がある時からチクチクと痛みしこりのような物がある事で、この体が変化していると知った。
自分が王子ではなかったと気づいたのはいつだっただろう。他の者の裸など見た事もなかったから、自分のこの体の一部分が兄と違うなんて知らなかった。
生まれてから今まで一つ上の兄君とは二人兄弟として育ってきた。思い返せば私の身の回りの世話の一切をなぜか、このばあや一人で担っていたのがずっと不思議だった。
着替えも湯浴みも下女たちには絶対にさせなかったから。そんな自分の体が実は女だと知ってしまった。
これはばあや以外の周りの者に絶対に知られてはならない秘密だったのだ。
第二王子として過ごしてきた私が…
実は姫であるという事を…。
__15歳の誕生日に隣国の王子の妃として嫁ぐその日まで…。
明日は十三歳の誕生を祝う宴。
嫁入りまではあと二年…。
それまでは王子として過ごさなければならない。
明日盛大に行われる誕生の宴に訪れる客たちにも、王子として振る舞わなければならない。
それを思うと今から気が重い。
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