予言と密約

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 近頃あの山の向こうに城を構える頭が獣で体が人間の獣の王が美しくて若い姫ばかりを狙い、姫を差し出せと言っては国を攻めてきて強引に拐っていくと噂に聞く。  そんな姫を獣の王から守るために王宮では姫が生まれた事は秘密にされたのだった。  王と后以外の全ての王宮の者たちにも…。どこかから噂が漏れるのを恐れ、姫の誕生を王子だと偽ったのだ。  本日の宴の影で密かにその秘密をあかされたこの隣国の王以外には…。 「約束通り、姫ぎみが15歳になった暁には妃として迎え入れる。それまでどうか大切に育てて頂きたい。決してあの山の奥の獣の王にこの姫のその存在を知られることの無いように…。」 「わかっておる。この姫には一つ違いの兄がいるのだ。姫はこの兄の影武者として身を潜めながら第二王子として過ごすことになる。」 「我が国に、先を見通す事の出来る類い稀な不思議な目を持つ者がおる。その者は何でもそつなくこなし、よく気のきくベラという者だ。その者を姫の専属の側仕えの乳母として遣わせる。そして期が熟した頃、我が国の剣術に長けた護衛の者も遣わせよう。この二人をどうか姫のお世話係としておそばにおいていただきたい。きっとこの二人が姫を守り、役にたつであろう。」  そうして第二王子の誕生の宴の陰で王たちの密約は交わされた。  表向きは『第二王子』の誕生の宴として盛大に三日三晩続いた。   倉の食料が今にも底を尽きそうなほど盛大に客たちはもてなされた。  まるごとチキンがこんがりと焼かれるいい香りが漂い、各国の質のいい沢山のワインや沢山の豪華な料理がテーブルにところせましと並んだ。 “王子の誕生”を祝うべく訪れた近隣諸国の多くの客人たちを精一杯おもてなしするために。
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