<27・Vera>

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<27・Vera>

 そう。  自分は、守らなければいけない。  気づいた自分にしか守れない。あの人は、そう言ったのだ。 『あたしの神様はね、こう教えているの。……守りたいものがあるならば、勇敢でなければいけないと。勇敢というのは、本当のことを知る勇気を持つということでもあるのよ』  信心深い彼女は、名前をアマンダという。ブロンドの髪までも紫色に染めている女性だった。年は五十も半ばくらいだろうか。少しふっくらしていたが、ほどほどに化粧をした顔は十分美人と呼べる範疇だった。  何より、いつもニコニコしていた。レナの脈絡ない話も、毎日しっかり耳を傾けてくれたのである。だからレナもこっそり学校帰りに彼女に会いに公園に通ってしまったのだ。 『貴女は、貴族のお嬢様なのに、使用人の皆さんのこともとても大切にしてらっしゃるのね。きっとそのマリアさんというお嬢さんも、貴女のことを本当の妹のように思っていたと思うわ』 『うん。……マリアは、レナのこと、とても可愛がってくれた。レナも、お姉ちゃんみたいで大好きだった。マリーお姉ちゃんより年が近くて付き合いやすかったし……』 『そうよね。そのマリアさんが亡くなってしまったのが本当に悲しいなら……悲しいと思っているだけではいけないわ。真実を突きとめないと』 『真実?』 『ええ。……彼女を殺したのが誰なのかを知り、その敵を討ち取るべきよ』  敵。  レナにとっては驚きの言葉だった。マリアの死をずっと引きずってはいたが、彼女はきっと自殺だったのだろうと思っていたから。 『マリアは、自殺じゃないの?』 『それはわからないわ』  けどね、と彼女は告げた。 『彼女が自殺だとしても……彼女を自殺に追い込んだものがいた可能性が高いでしょう?そう、彼女が、貴女のお兄さんを愛してしまったと知られなければ……彼女は解雇されることはなかったはずよ。だとしたら、誰かが彼女の恋心を告げ口したに違いないわ。そして、それは彼女がいなくなって都合の良い人物であるはず……そうじゃない?』  それは、レナも少しは考えたことだった。マリアは、エリスのことが好き。それはつまり、同じくエリスに想いを寄せていて、最終的に婚約者に収まったベラにとっては面白くないはずだろうと。  けれど、レナはベラのことを信じていたのだ。正確には、信じていたかったというべきか。彼女ならばエリスのことを任せられると考えて、レナも幼い恋心を封印してきたのである。
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