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『お兄ちゃんのこと、まもりたいって言ったよね。じゃあ、やくそくして、レナと。……お兄ちゃんをまもるんだって。なにがあっても、まもるんだって。そしたらレナ……レナ、エリスお兄ちゃんとベラさんが、けっこんしても、いいよ』
だって、ベラは約束してくれたのだから。
何に代えても、エリスを守ると。だから。
『……ベラさんが、そんなことするはずない。婚約者だからって、そんな』
『なるほど。お兄さんの婚約者さんが怪しいのね?』
『怪しいってほどじゃ』
『でも、貴女もそう思っているのでしょう?だから今、名前を出したのでしょう?マリアさんのことが一番憎くて、嫌いで、邪魔だったのはきっと彼女だろうって』
『き、嫌いなんて……』
そんなことない、そんなはずがない。そう言いたかった。レナの目から見ても、マリアとベラは仲良しに見えたから。それこそ、恋敵だとは思えないほどに。
でも。
婚約者となったからこそ。エリスが自分のものになるとはっきりしたからこそ。横恋慕してくるかもマリアが邪魔で、確実に排除しにかかったということはないのだろうか?だから、彼女が解雇されると知っていて、両親に告げ口をしたのではないか。
あるいは。
屋敷を追い出された彼女を、自ら川に――。
『自殺じゃないかもしれない、そうでしょう?溺死体は、自殺か他殺かの区別が本当につきにくいもの。……証拠もなく、人を殺すには最適な手段かもしれないわね』
アマンダの声が耳の奥でガンガンと響く。
『ねえ、レナ。貴女は不安ではないの?貴女の大切なお姉さんを殺した敵が、婚約者としてのうのうと家に上がり込んできているかもしれないのよ?』
『そ、それは……』
『あたしが敬愛する教祖様ならきっと貴女の背中を押すわ。守りたいものがあるなら、手に入れたいものがあるなら、勇気を出すことを躊躇ってはいけないと。ベラ・アメジストがマリアを殺し、貴女の愛するお兄様を奪っていこうとしている。その事実に気付いた貴女にしかできないことがあるんじゃなくて?そう』
彼女はレナの手を握り、目を見つめ、はっきりと告げてきたのである。
『愛する者を守るためには、邪魔者と戦う勇気を持つこと。それは罪などではけしてないわ。さあレナ、勇気をもって。教祖様はあたしたち、愛を知る女性たちの味方であるのだから!』
繰り返し、繰り返し、繰り返し。
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