天の川にて

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両親は精霊の警備が付いた屋敷から出られないままだが、姫織との 対話は『浮遊鏡(ふゆうかがみ)』のみで可能になった。 浮遊鏡とは、名の通りに宙に浮かぶ楕円形の鏡だ。 それに向かって会話したい相手の名を呼ぶと、相手の姿が鏡へと 映し出され、声も聞こえて対話ができる。 姫織は幽閉されてから、寂しくなると泣きながら両親を呼ぶ。 両親は泣きたいのをこらえて笑顔で応えてくれていた。 「お父様、お母様......」 姫織の声を感知すると、室内でも外でも浮遊鏡が自動的に移動して 出現してくる。 鏡は対応できる範囲だと認識してから作用するので、相手に失礼は もたらさない。 それは貴族のみが使用できる高性能からだった。 『姫織、また泣いているのかい?いま庭にいるよ。ほら花が咲いたよ』 父が宙に浮かび上がった鏡へと花を向ける。 『姫織、泣かないで、いつか、きっと、希望はみえてくる筈』 母が自室で浮遊鏡から声をかけてきた。
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