0人が本棚に入れています
本棚に追加
両親は精霊の警備が付いた屋敷から出られないままだが、姫織との
対話は『浮遊鏡(ふゆうかがみ)』のみで可能になった。
浮遊鏡とは、名の通りに宙に浮かぶ楕円形の鏡だ。
それに向かって会話したい相手の名を呼ぶと、相手の姿が鏡へと
映し出され、声も聞こえて対話ができる。
姫織は幽閉されてから、寂しくなると泣きながら両親を呼ぶ。
両親は泣きたいのをこらえて笑顔で応えてくれていた。
「お父様、お母様......」
姫織の声を感知すると、室内でも外でも浮遊鏡が自動的に移動して
出現してくる。
鏡は対応できる範囲だと認識してから作用するので、相手に失礼は
もたらさない。
それは貴族のみが使用できる高性能からだった。
『姫織、また泣いているのかい?いま庭にいるよ。ほら花が咲いたよ』
父が宙に浮かび上がった鏡へと花を向ける。
『姫織、泣かないで、いつか、きっと、希望はみえてくる筈』
母が自室で浮遊鏡から声をかけてきた。
最初のコメントを投稿しよう!