天の川にて

1/5
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/53ページ

天の川にて

ミルキーウェイとも呼ばれる天の川は本当に乳白色の水が流れている。 その川を挟んで戦士たちが、姫織(ひめおり)を妻にする為の争奪戦を 繰り広げてから10年の月日が過ぎていた。 「これって、あと10年は続くのかしら?」 戦争の発端となっている女性、姫織は籠の窓から天の川を見下ろす。 争奪戦のあいだ自由を奪われ、天の川の上空に浮いた籠の中へと 閉じ込められたままなのだ。 「10年より、もっとでしょうね」 着替えを持ってきた侍女の精霊が思うままに口にした。 通常の精霊より口数が少ないのは、姫織とは気安く対話してはいけないと 言いつけられているからだ。 「もっと?どのくらい?」 「わかりません」 「わからないのね......」 姫織は装飾の美しい椅子に座り、ため息をついた。 「姫織様、入浴へどうぞ。準備ができした。 新しい着替えは、こちらに置きますね」 そう告げると精霊は空中を漂い、籠をすり抜けて去っていった。 それは精霊の体質だが、他の者にしてもどんな方法であっても 侍女以外が籠に侵入するか近づけば、千年間は牢獄に閉じ込めると 王が定めていた。 精霊は小柄な女の子の姿であり、髪型はそれぞれに違うが、誰もが ベレー帽をかぶっている。 そして長袖のワンピースに白い靴下とフラットな靴。 レースの折り重なる白いペチコートを履いているので、どんなに 飛び回っても下着が見えないように配慮されている。 この精霊は貴族社会でしか生息しない存在であり、姫織が貴族だから 仕えさせれる者でもあった。
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!