星彦と姫織の出会い

1/13
前へ
/55ページ
次へ

星彦と姫織の出会い

「特例の依頼です」 姫織を世話する精霊に言われ、星彦は口をポカンと開けている。 「姫織様を幽閉している籠が、ぐらついてきました。 このバランスを保つには配線工事をする必要があるそうです。 その工事ができるのは、星彦さんの父上のみ。 ですが、亡くなられていますね。星彦さん、貴方にはできますか?」 精霊が差し出してきた籠の配線図を見てみる。 確かに浮遊させる部屋のバランスを保つ装置の配線は、亡き父が 得意とした分野であり、星彦はその技術を受け継いでいた。 ある程度の大きさの浮遊物ともなると、念動力だけでは修理できない。 特殊な工具を必要とするのだが、それを持っているのも星彦のみだった。 「これなら俺でもできます。 しかし、どのくらいの損傷なのかは、室内で点検してみないと。 天井に取り付けられているシーリングを見る必要があるんです」 「室内!室内には姫織様が、おられます。 男性を入れるわけにはいきません!」 「とはいえ、室内からでないと見られません。 籠は上下なんですよね?天井をみるあいだは下にいればいいのでは?」 「籠に出入りできるのはワタクシのみです。 ワタクシは貴方を見張らなければならない。そんな状況で 下の庭で姫織様を、独りにしておくわけにはいきません」 「それは仕方ないですね。女性の作業員に頼んで、 籠ごと取り替えるしかないでしょう」 「籠ごと?そのあいだ、姫織様はどうすれば?」 「知りませんよ~」 「と、とにかく上の者と相談してみます!」 精霊が小型の浮遊鏡を取り出して話し始めた。 星彦は自身の家なのに早く出たかった。 予約の入ってある修理には遅れたくなかった。
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加