0人が本棚に入れています
本棚に追加
星彦と姫織の出会い
「特例の依頼です」
姫織を世話する精霊に言われ、星彦は口をポカンと開けている。
「姫織様を幽閉している籠が、ぐらついてきました。
このバランスを保つには配線工事をする必要があるそうです。
その工事ができるのは、星彦さんの父上のみ。
ですが、亡くなられていますね。星彦さん、貴方にはできますか?」
精霊が差し出してきた籠の配線図を見てみる。
確かに浮遊させる部屋のバランスを保つ装置の配線は、亡き父が
得意とした分野であり、星彦はその技術を受け継いでいた。
ある程度の大きさの浮遊物ともなると、念動力だけでは修理できない。
特殊な工具を必要とするのだが、それを持っているのも星彦のみだった。
「これなら俺でもできます。
しかし、どのくらいの損傷なのかは、室内で点検してみないと。
天井に取り付けられているシーリングを見る必要があるんです」
「室内!室内には姫織様が、おられます。
男性を入れるわけにはいきません!」
「とはいえ、室内からでないと見られません。
籠は上下なんですよね?天井をみるあいだは下にいればいいのでは?」
「籠に出入りできるのはワタクシのみです。
ワタクシは貴方を見張らなければならない。そんな状況で
下の庭で姫織様を、独りにしておくわけにはいきません」
「それは仕方ないですね。女性の作業員に頼んで、
籠ごと取り替えるしかないでしょう」
「籠ごと?そのあいだ、姫織様はどうすれば?」
「知りませんよ~」
「と、とにかく上の者と相談してみます!」
精霊が小型の浮遊鏡を取り出して話し始めた。
星彦は自身の家なのに早く出たかった。
予約の入ってある修理には遅れたくなかった。
最初のコメントを投稿しよう!