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大柄な星彦には籠の中が狭かったが、むしろそのおかげで
脚立に軽く足をかけるだけで天井に届いた。
それでも緊迫した状態で変な汗が出る。
すぐ近くに姫織がいるからではない。
精霊が巨大な槍の先を常に首元に突き付けているからだ。
「あぁ、なるほどね。かなり古びているけど配線に問題無し。
天井のシーリングを取り替えるだけで済みますよ」
星彦は脚立から降りて工具箱の中から小型のシーリングを取り出す。
犬のリリが興味深そうに鼻を近づけた。
動物の好きな星彦は目を細めてリリへと微笑む。
「大丈夫だよ、すぐ終わるからね。
確かにグラグラに揺れているね、不安だったろう?
ちゃんと直してあげるからね」
「きゃんっ」と、鳴いて、リリは返事をした。
おもわずリリの頭を撫でたら槍で首を少し突かれた。
チクリとした痛みのあと、わずかに血がにじんだ。
「星彦さん!姫織様の大切な犬に触れないでください!」
「痛いなあ、はい、すみませんでした」
それを見た姫織は様々な意味で涙を流し、ハンカチで拭いていた。
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