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幽閉されて10年......。
来るのは口数の少ない精霊ひとりのみ。
犬のリリに優しく話しかける男性なんて初めて見た。
それで姫織は感涙していた。
しかも男は首筋に微量の血を流しつつ、それでも嫌な顔ひとつせずに
脚立に上がり、天井のシーリングを数分で取り替えた。
リリに話しかけたというだけでの怪我......。
その申し訳なさにも姫織は泣いていた。
「姫織様、作業は済んだようです。
恐い想いをさせてしまい、申し訳ありません」
見当違いのことを言う精霊へと姫織は首を横に振った。
星屑のような涙が散った。
星彦は自身のせいなどとは思いもしないまま、姫織に同情した。
やはり幽閉生活は辛いのだろうな......と。
脚立を仕舞い込み、工具を手に持ってから、星彦はもしかしたら
殺されるかもしれないと覚悟しながら声にした。
「姫織様、お体に気を付けて」
殺されはしなかったが、精霊に激しく槍で突かれて星彦はよろけた。
姫織は声にならない声をあげて泣いた。
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