天の川にて

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姫織は、その世界で最も美しい女性だと認定されている。 慎重172センチで細長い手足、真珠のような白い肌は滑らかに 輝き、逆卵型の輪郭の小顔、通った高い鼻筋。 その顔の半分にみえるほど大きな紫色の瞳、ふっくらした唇。 髪は艶やかな黒で夜露のようにきらめく。 そして透明感のある美声でもあり、歌声は誰もが癒された。 姫織が結婚できる年齢になったとき、あらゆる国からの求婚が 寄せられたが、姫織はすべて断った。 それがきっかけで無理矢理に略奪しようとする男も女も出現した。 姫織と両親は王の特別な緊急処置を受け、自宅を警備する精霊が 配置されて外出できなくなった。 周囲の女性たちは心底、姫織を気の毒に感じて、励ましの声を 精霊を通じて送ったりもした。 それは姫織と両親の人格の良さからだ。 姫織は自身の美貌をひけらかす傲慢なタイプではない。 温かい白米のご飯と野菜が大好きな、気立てのいい女性なのだ。 「お父様、お母様、ごめんなさい。 あたしのせいで自由のない生活に......。 だけど、あたし、恋愛して結婚したい。普通の恋がしたい」 影を伸ばすほどの長いまつ毛を伏せて姫織はうつむいた。 「姫織、そうだね、普通を望むのは当然のことだ」 と、父が言った。 「私と、お父さんのような、運命の出会いがあればいいね」 と、母が言った。 姫織の美貌に納得できるほど両親は美男美女だ。 その両親は貴族社会では珍しく、恋愛結婚だった。 家柄で決まる婚約を双方が断り続け、周囲からの反対を押しのけて 苦難を乗り越えて結ばれたのだ。 もちろん時代が進み、貴族社会にも緩みは生じているが、やはり 家柄や仕事関係を通じた結婚が通常ではあった。
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