天の川にて

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やがて国々で様々な争いが起きようとしていた。 武力で姫織をものにしようと企てが始まりかけたのだ。 世界そのものを統べる王は、歪曲した争いを食い止める為の法を 作り上げてから、姫織を幽閉した。 両親は精霊の警備が付いた屋敷から出られないままだが、対話は 『浮遊鏡(ふゆうかがみ)』のみで可能になった。 浮遊鏡とは、名の通りに宙に浮かぶ楕円形の鏡だ。 それに向かって会話したい相手の名を呼ぶと、相手の姿が鏡へと 映し出され、声も聞こえて対話ができる。 姫織は幽閉されてから、寂しくなると泣きながら両親を呼ぶ。 両親は泣きたいのをこらえて笑顔で応えてくれていた。 「お父様、お母様......」 姫織の声を感知すると、室内でも外でも浮遊鏡が自動的に移動して 出現してくる。 鏡は対応できる範囲だと自動的に認識してから作用するので、相手に 失礼はもたらさない。 それは貴族にしか使用できないからこその高性能からだった。 『姫織、また泣いているのかい?いま庭にいるよ。ほら花が咲いたよ』 父が宙に浮かび上がった鏡へと花を向ける。 『姫織、泣かないで、いつか、きっと、希望はみえてくる筈』 母が自室で、声を震わせながらも言ってくれた。
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