貴族界にて

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星彦も寿命の長い種族だが、両親は流行り病で亡くなった。 それからは屋敷を売り、小さな一軒家に移り住み、独りで生きている。 父親は世界各地にある浮遊物を取り扱う技術者で、その実力から 貴族界へと階級が上がり、貴族の女性と恋愛結婚した。 もちろん数々の苦難を乗り越えての成就だった。 そんな両親の影響もあって、星彦は大らかな性質に育ち、父親に 教え込まれた技術を生かして生活ができている。 「うちの息子も天の川に行ったきりよ。元気かしらねぇ。 星彦ちゃんは姫織様に興味は無いの?好みじゃないの? もしくは男性が好きなほう?それだとしても相手が探せないわね。 戦士は男性のほうが多いんだから」 庭に浮遊する銅像を念動力で直していたら女性に言われて、星彦は 両手をかざしながら高笑いした。 「人には色々あって当然だけど、俺の恋愛対象は女性ですよーっ! そうですねえ、映像で観たとき、確かに綺麗だと思いました。 でも、見ただけでは好きか嫌いかは判断できませんよ。 恋愛ってのは、出会ってから始まるもんだと思います。 そういう意味では、姫織さんの容姿に魅かれて闘う人たちだって、 姫織さんに出会ったからこそでしょうね」 熱弁した星彦に、女性は自身の着ている水玉のドレスほど目を丸くした。 「星彦ちゃん、立派な考え方だわ! 自分の信念を曲げないまま、他者も否定しない! 星彦ちゃんには幸せな結婚をして欲しいものよ。 階級が低いとはいえ、良い縁談がこないかしらねえ」 「それもありがたいけど、両親が恋愛結婚ですからね。 俺も恋愛に憧れます」 星彦は笑顔で返し、修理の礼としてもらった焼き魚を受け取った。 これもまた特別に提供された、星彦しか食べないものだ。
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