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天の川にて
ミルキーウェイとも呼ばれる天の川は本当に乳白色の水が流れている。
その川を挟んで戦士たちが、姫織(ひめおり)を妻にする為の争奪戦を
繰り広げてから10年の月日が過ぎていた。
「これって、あと10年は続くのかしら?」
戦争の発端となっている女性、姫織は籠の窓から天の川を見下ろす。
争奪戦のあいだ自由を奪われ、天の川の上空に浮いた籠の中へと
閉じ込められたままなのだ。
「10年より、もっとでしょうね」
着替えを持ってきた侍女の精霊が思うままに口にした。
通常の精霊より口数が少ないのは、姫織とは気安く対話してはいけないと
言いつけられているからだ。
「もっと?どのくらい?」
「わかりません」
「わからないのね......」
姫織は装飾の美しい椅子に座り、ため息をついた。
「姫織様、入浴へどうぞ。準備ができした。
新しい着替えは、こちらに置きますね」
そう告げると精霊は空中を漂い、籠をすり抜けて去っていった。
それは精霊の体質だが、他の者にしてもどんな方法であっても
侍女以外が籠に侵入するか近づけば、千年間は牢獄に閉じ込めると
王が定めていた。
精霊は小柄な女の子の姿であり、髪型はそれぞれに違うが、誰もが
ベレー帽をかぶっている。
そして長袖のワンピースに白い靴下とフラットな靴。
レースの折り重なる白いペチコートを履いているので、どんなに
飛び回っても下着が見えないように配慮されている。
この精霊は貴族社会でしか生息しない存在であり、姫織が貴族だから
仕えさせれる者でもあった。
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