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「なぁゆうと、矢沢先生、俺らをハメるつもりじゃない?」
「十中八九そうだろうな」
「じゃあなんで受けたんだよ?」
「あきら、決まってるじゃん。負けないからだよ」
山田ゆうとは、ふふんと鼻を鳴らす。
「本当かよ? 俺らがいくら先の勉強しているって言ったって、みんな九十点って厳しいだろ?」
「猫被りのあきらがよく言うよ。自信はあるんだろ?」
「そりゃあね」
矢沢先生から勝負を宣告された五年二組のメンバーは気にも留めていない。逆にどんな難問が来るかワクワクしているくらいだ。五年二組の生徒は誰一人塾にも通っていないが自信はある。先生方は知らないが、歌うことで勉強の気分を上げる他に、クイズ感覚で高校や大学の問題にも手をつけている。その中で歌うことで気分を盛り上げているのは全員満点の状態を作るためだ。
山田ゆうとがみんなと歌い始めたのは三年生のとき。勿論、問題になった。その状況を打破したのが全員満点を目指すことだった。
「でもさぁ、僕らだけ罰があるのは面白くないよね? 勝負なら矢沢先生も負けたら何かして欲しくない?」
山田ゆうとは、佐々木あきらににっこりと微笑みかける。
「ゆうとがその顔するとき怖いんだよなぁ。本当、勉強できなさすぎて最低の生徒って言われた奴が悪知恵ばかり考えるようになったの笑えないよ」
「褒め言葉として受け取っておくよ。僕は僕が生きやすいように環境を変えただけだから。お金も大人も使わずに。それを守るために動くのは悪いことじゃないでしょ?」
「はいはい。ゆうとの好きにしなよ。どうせ反対の奴なんていないよ」
「ありがとう。僕が考えているのは矢沢先生にも歌わせようかなってさ」
「歌うのに反対な矢沢先生を?」
「そう。歌うのに反対な矢沢先生を」
「いいね!」
工藤さきが山田ゆうとと佐々木あきらの間に割って入ってくる。
「賛成賛成! 矢沢先生、いっつもイライラしてるから歌ってストレス発散するのがいい!」
「だよねぇ」
矢沢先生のストレスの素は、矢沢先生に対する罰を決めた。それをどこで矢沢先生に伝えるか。五年二組にとって矢沢先生が思いつく難問など造作もないことを覚られず矢沢先生に受け入れてもらわないと意味がない。山田ゆうとを中心にする五年二組はこっそりとその相談を始めた。
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