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テストの変換。全員が九十点以上のテスト。全員に渡し終えてから矢沢先生は教卓で生徒に頭を下げる。
「先生の負けです」
「もう好きに歌いなさい」
「先生、何言ってんの? これからは先生も歌うんだよ?」
山田ゆうとがにっこりと頬杖をついて笑っている。ものすごく悪い顔に見える。
「はいはい。好きになさい」
「じゃ、さんはい!」
山田ゆうとがタクトを手に立ち上がり歌い出す。生徒たちが各々立ち上がり歌い出す。矢沢先生もそれに続く。
「僕らは楽しく勉強するんだから先生も付き合ってよね!」
楽しそうな山田ゆうとの顔。矢沢先生には山田ゆうとの顔が昨日までとは違って見える。あの余裕のある笑顔は努力で権利を手に入れたものの顔だ。中学に行っても高校に行っても大学に行っても社会に出ても、彼は、みんなは努力で権利を勝ち取るのだろう。
いいだろう。乗ってやろう。君らがどこまでできるか見守ってやろう。
矢沢先生は声を張り上げる。
「先生、楽しそうで綺麗だよ」
心底楽しそうな山田ゆうととその仲間たち。勝利の歌声は天まで届く。
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